こんにちは。ヒョウです。big5のメンバーが夏休みに釣りに行くとのことで,急ぎopenfoamでルアーのシミュレーションをして3Dプリンターで実物を作りました。作ったルアーはメンバー宛に郵送しました。実釣後にメンバーが記事を書くと思いますので,それまでにこちらでやったことを記事にしなければなりません(笑)。
openfoamと数値流体力学が好きで見てくれている方にはちょっと申し訳ありませんが,エッセイ的に(?)書かせていただきます。シミュレーションから二つのルアーを作成したところまでの過程を書いていきたいと思います。
目次
オブジェクト後方の流れ場について
今までにシリーズで解説してきた円柱後方の流れ場モデルの設定でシミュレーションを行います。その円柱後方の流れ場の計算結果が上の図です。流体は常温常圧の水を想定しています。円柱後方の流れ場が実際の報告を大体再現できていることからそこそこの精度はあると考えます。
円柱後方の流れ場モデルでの計算設定概略
ここで計算設定の詳細を説明することは割愛します。興味のある方は,円柱後方の流れ場シリーズをご確認下さい。こちらから。
概略のみですが,icoFoam, piso法,圧力算出の繰り返し回数は2回, 境界層メッシュ数3,円柱の直径に対して20メッシュ入るサイズです。クーラン数は0.1程度です。
既往の研究との比較
この写真が実際の報告例です。流れ場のレイノルズ数に対する依存性として,レイノルズ数140程度以上から規則的な渦が発生しています。このことは一つ上で示したシミュレーション結果でも見られます。実際の報告結果が再現できていると考えます。
最終的な検証は実釣
計算の精度を追求していくことは可能と思いますが,だいたい精度出ていると考えまして,ルアー形状でのシミュレーションを実施していきます。
ルアー開発,ただの直方体からスタート
ただの直方体からシミュレーションを行います。計算設定は上述した内容を踏襲しています。ポイントとしては,直方体の3つの辺の長さをわざと変えており,20mm, 40mm, 80mmとしています。x軸のマイナス側の方向から水の流れ場を作ったときに,この直方体(オブジェクト)の後方にどのような流れ場が発生するかを確認していきます。円柱後方の流れ場のように振動する流れ場が得られれば,規則的な振動をするルアーができたと考え,3Dプリンターで現物を作って実釣して検証しようという考えです。
流れ場の結果と考察
ただの直方体をオブジェクトとした場合の流れ場のアニメージョンです。入口面流速0.1m/sと0.05m/sでの計算を行いました。入口面流速はルアーを巻く速さだと思ってください。
入口面流速 0.1m/sの場合
右上が直方体を真横から見た場合の速度分布,右下が直方体を真上から見た場合の速度分布です。
入口面流速0.05m/sの場合
これも同様に右上が直方体を真横から見た場合,右下が直方体を真上から見た場合の速度分布です。
上流の乱れが邪魔
流速0.1m/sの結果も0.05m/sの結果も,真上から見た場合の速度分布をよく見ると直方体の後方で速度が小さい領域(青色の領域)がうねうねと規則的に振動していそうに見えますが,直方体の上流側で発生した剥離流がその規則的な振動を邪魔しているように見えます。
このことから直方体の上流側で発生する剥離流をできにくくすることでルアーアクションが得られると考えました。
3Dプリンターでルアーを作成
上記の考えに基づいて作った形状が下記の二つです。上で示した直方体の寸法をそのままとし,前方部分だけ丸めた形状をobject001と名付けました。object001は高さがちょっと高いように見えたので,少し高さを低くした(高さを25mmとした)形状とし,object001と同様に前方側を丸めた形状をobject002として実物を作成しました。下に示すCAD形状がobject001です。
object001 とobject002
下図の右側がobject001,左側がobject002です。それぞれおもりとして10mmのステンレス球を内情するための空間を作りました。object002はおもりの位置を変えられるように穴を5つ作っています。
ワイヤーを通してフックを付けたら二か所でねじ止めして完成です。これを実際に投げてリトリーブしてもらってルアーっぽいアクションができるか検証します。(検証してもらいます)
ただの直方体からスタートしてひとつづつ改良し,流れ場を考察して良いルアーを作っていきたいと思います。夏ですね。
コメント
[…] 最近,openfoamでルアー作成の記事を作り始めました。こちらです。 […]